モータとは、電流を流すことで回転動力を生む装置のことを指します。産業機械に限らず、自動車や家電などの身近な製品にも搭載しており、機械を動かすためには欠かせないものとして活用されています。
一口にモータと言っても種類が豊富にあり、仕組みや特徴の違いによって細かく分類されています。例えば駆動電源の種類で分けると、直流のDCモータと交流のACモータがあります。さらにDCモータとACモータから細かく分けることも可能で、豊富な種類をラインナップしています。
今回は、DCモータとACモータの代表的な種類と、それらの特徴について見てみましょう。
■DC(直流)モータの種類と特徴

DCモータは直流モータ(direct current motor)の意味を表したもので、直流電源を利用することで回転するモータのことを指します。
ここではDCモータのなかでも代表的な、ブラシモータ・ブラシレスモータ・ステッピングモータ・コアレスモータの特徴について解説します。
◇ブラシモータ
ブラシモータは、小学校の理科の実験や模型、家電などに使われている一般的なタイプです。電流の出入り口となる部品のブラシを搭載していることから、ブラシモータと呼ばれています。
基本的にモータは、大きく分けて「ロータ(回転子)」と「ステータ(固定子)」の2つから構成されています。
ロータは、シャフトと繫がった部分で、電流を与えると回転する部品のことを指します。ステータは、主にロータの外周部分を指しており、ロータを回転させるための力を発生させますが、ロータと違って回転はしません。
ブラシモータは、ロータにコイル・鉄心・コミテーターを、ステータに永久磁石・ブラシなどを搭載しています。コミテーターは、コイルに流れる電流の向きを自動で切り替えられるもので、モータが常に回転するために必要な部品です。
ブラシモータは、ブラシを通してコミテーターに電流を流すと、ロータが電磁石になり、ステータにある永久磁石と反応して、引き寄せられる力と反発する力が作用し、回転力を生みます。ブラシモータは、コミテーターを搭載しているため、トルクがいつも同じになるように設計されており、途中で途切れることなく回転を続けられます。
ブラシモータの特徴は、乾電池でも動くことと、モータの線を繋ぎ変えるだけで回転方向が変えられる点にあります。これらの手軽さから、モータのなかでも多くの生産台数を誇ります。
◇ブラシレスモータ
ブラシレスモータは、ブラシとコミテーターを搭載していないDCモータのことを指します。
ブラシモータでは、軸であるロータにコイルを、ステータに永久磁石を搭載していたのに対して、ブラシレスモータは、ロータに永久磁石、ステータにコイルを搭載しています。しかし、回転する部品が変わっても回転の原理はほとんど同じです。
ブラシレスモータは、ブラシモータで搭載していた、ブラシとコミテーターがない代わりに、半導体スイッチ素子がモータの外部に搭載されています。半導体スイッチ素子は、回転する永久磁石の位置に合わせて通電を切り替える役割をもち、常時同じトルクを発生させることができます。
ブラシレスモータは、ブラシとコミテーターを搭載していないため、ブラシの摩耗や電気ノイズの問題が発生しない特徴があります。また、高性能磁石を搭載することで、モータの小型化が図れます。
◇ステッピングモータ
ステッピングモータは、ステータに複数のコイルを配置し、軸であるロータに永久磁石を搭載した構造です。
コイルは円状に配置されており、電流を流すと磁場が生成し、それに伴いロータが回転します。電流は円状に配置されたコイルを順番に通電することにより、ロータが時計の針のように一定の角度毎に回転します。
ステッピングモータのロータは、構造により永久磁石ロータ・可変リラクタンスロータ・ハイブリッドロータの3つに分類されます。
永久磁石ロータは、名前の通りロータに永久磁石を搭載したタイプで、電力の消耗が少ないメリットがありますが、他の種類に比べて速度と分解能が乏しい傾向にあります。
可変リラクタンスロータは、ロータに鉄心を使用した構造で、優れた速度と分解能を実現しますが、トルクが低くて小型化が困難です。
ハイブリッドロータは、永久磁石ロータと可変リラクタンスロータのハイブリッド型で、優れた速度・分解能・トルクを実現します。一方で複雑な構造を必要とするため、他のタイプに比べてコストがかかります。
◇コアレスモータ
コアレスモータは、ブラシモータやDCブラシレスモータの一種です。ブラシモータは鉄心にコイルを巻き付けているのに対し、コアレスモータはコイルに鉄心を搭載していないタイプのモータを意味します。
コアレスモータは、ロータにカップ型のコイルを、その内側に円柱状の永久磁石を含むステータを内蔵した構造です。
コアレスモータは鉄心を搭載していない分、軽量なほか、慣性モーメントが小さく、応答性・加速性・静音性に優れています。また、電気ノイズや振動が少ないのも特徴です。ただしトルクは一般的なモータに比べて小さい傾向にあります。
■AC(交流)モータの種類と特徴

ACモータは、交流モータ(alternating current motor)の意味を表したもので、交流電源を利用することで回転するモータのことを指します。
ここでは、ACモータの一種である、シンクロナスモータ・リバーシブルモータについて解説します。
◇シンクロナスモータ
シンクロナスモータは、別名「同期モータ」とも呼ばれるもので、交流の電源の周波数に合わせた速度で回転するタイプです。コイルを搭載したステータが磁界を発生させたのに対して、ロータの回転が同期します。
構造および特徴については、ブラシレスモータとほとんど同じです。小型モータの生産台数はDCモータがほとんどですが、次いでブラシレスモータとシンクロナスモータも多いとされています。
◇リバーシブルモータ
リバーシブルモータは、モータに簡易ブレーキ機構を内蔵しており、瞬時に回転方向を切り替えたり、運転と停止を繰り返したりできるタイプです。インダクション(誘導)モータと呼ばれるものの一種で、「アラゴの円板」を基に回転します。
アラゴの円板とは、アルミ円板をU字型磁石で挟んだ状態で、U字型磁石を動かすと、アルミ円板も同じ方向に遅れて動く現象のことです。U字型磁石から発生する磁界がアルミ円板上を通過すると、誘導電流が流れます。U字磁石を動かすと、磁界が動かした方向にはたらき、アルミ円板も回転するという仕組みです。
リバーシブルモータやインダクションモータは、ステータにU字型磁石の代わりとなるコイルを、ロータにカゴの形をしたアルミを搭載しています。これらの構成により、アラゴの円板と同様の原理で、モータを回転させられます。ただしインダクションモータは、レバーシブルモータと違い、瞬時に逆回転させることができません。
リバーシブルモータは瞬時に回転の向き変えられる特性上、インダクションモータよりも電流を多く必要とします。そのため温度が上昇しやすく、時間定格や停止頻度が定められている点に注意が必要です。
■モータの種類と特徴についてのまとめ

モータは駆動電源の種類で分けると、直流電源を利用したDCモータと、交流電源を利用したACモータがあります。モータは仕組みや特徴によって、さらに細かく分類が可能です。
今回はモータのなかでも、最もポピュラーとされるブラシモータだけでなく、ブラシレスモータやシンクロナスモータなどの種類についても解説しました。今回ご紹介したものは代表的なものとなりますが、このほかにもモータは種類があります。
ぜひこの記事を参考にして、各種類のモータの特徴を理解し、知識を深めてみてください。