トランスとは
電子部品における「トランス」とは、電磁誘導と相互誘導を利用した電圧の高さを変換するための部品のことで、別名「変圧器」とも呼ばれています。
電気は主に水力発電所・火力発電所・原子力発電所からつくられており、ここから変電所などを伝って電圧を上げたり下げたりしています。一般的に電圧を上げることを「昇圧」、電圧を下げることを「降圧」と呼びます。
トランスの用途
トランスは発電所からビル・工場・家庭などに電気を送る際、それぞれの場所に適した電圧に変化させるために使われています。また、家庭内で使う電気も、100Vの電圧から電気製品のなかでさらに変圧が行われています。
発電所で作られた電気は、27万5000V~50万Vの高電圧に変換されて送電線に送り出されます。しかしこのままでは電圧が高すぎるため、変電所を通して電圧を下げなければなりません。例を挙げると、ビルや中規模工場では6600Vに、小規模工場や住宅へは200Vまたは100Vに変圧して送られています。
それではなぜ元の電圧から変圧させる必要があるのでしょうか。これは使用する機器によって、適した電圧が異なるからです。
例えば工場で使う大型の加工機などは、稼働させるのに大きな出力を必要とします。しかし、逆に電圧が低いと動かすことができません。また、必要以上に大きすぎる電圧をかけると、機器が破損してしまいます。
このように、使用する場所や機器によって効率のよい電圧に変化させるために、トランスが活用されています。
トランスの構造と原理

トランスの基本構造は、上の画像のように鉄心に一次コイルと二次コイルを巻き付けたものになります。一次コイルは電圧を入力する側、二次コイルは電圧を出力する側を表します。
一次コイルに交流電圧を加えると、コイルのなかを通っている鉄心に磁束が発生します。一次コイルで発生した磁束は鉄心を伝って二次コイルを通過し、電圧を発生します。ここでは、一次コイルに直流ではなく交流の電圧をかけたことで、磁束の向きは周波数に合わせて交互に入れ替わっている状態です。
二次コイルがなぜ電圧を発生したかというと、「電磁誘導」と「相互誘導」を行ったためです。電磁誘導とは、ファラデーの法則のひとつで、コイルを通過する磁束を変化させると電圧が発生する現象のことを指します。
相互誘導は、二つのコイルが近くに位置していた場合、片方のコイルに電気を流すと、近くに位置していたコイルから電磁誘導が発生する現象のことを指します。
このことからトランスは、一次コイルで発生させた電気エネルギーを、磁気エネルギー、電気エネルギーの順番で変換させていることが分かります。
電圧の変化の仕組み
次にトランスはどのようにして変圧するのかを解説します。
トランスには一次コイルと二次コイルがあるという説明をしましたが、これらのコイルの巻き数比に応じて、出力される電圧に変化が生じます。コイルの巻き数と電圧の関係式は以下の通りです。
- V1/V2=n1/n2
- V1:一次コイルへ入力した電圧
- V2:二次コイルに出力された電圧
- n1:一次コイルの巻き数
- n2:二次コイルの巻き数
例えば入力する電圧V1が1000V、一次コイルの巻き数n1が100、二次コイルの巻き数n2が10の条件の場合、コイル巻き数比は10対1なので、二次コイルには100Vの電圧が出力されます。
まとめ
トランス(変圧器)とは、電圧を上げたり下げたりするための機器のことです。普段の生活で私たちが用いている電気も、トランスを通して降圧してから供給されています。
トランスの原理は、ファラデーの法則のひとつである電磁誘導と相互誘導の仕組みを利用しており、一次コイルと二次コイルの巻き数の違いで変圧を行っています。
[てま1]本画像は私が作成したもののため、そのままお使いいただけます。
そのほかに適切な画像があれば差し替えてもらっても構いません。