スイッチング式の電源とは?原理についても解説

スイッチングトランス
electrical transformers

電子機器のような精密な機械は、わずかな電圧の変化で誤作動を引き起こしてしまうものです。正常に電子機器を動作させる方法のひとつに、供給されている商用の交流電源から、安定した直流電流に変換する方法があります。このときに使用する電源のことを「直流安定化電源」と呼びます。

直流安定化電源には、スイッチング式とトランス式と呼ばれる2つの回路方式があります。スイッチング式は、トランス式に比べて変換効率に優れているほか、小型かつ軽量なのが特徴です。

本記事では、なぜスイッチング式がこれらの特徴を持つのか、スイッチング式とトランス式の違いとは何かについて解説します。

■直流安定化電源とは

まず始めに、直流安定化電源とは何かについて解説します。直流安定化電源とは、一定の電圧・電流を出力するために、安定化回路(レギュレータ)を搭載した電源のことです。略称として「直流電源」と呼ばれることもあります。

直流安定化電源は、商用電源(家庭に配電されている交流)を動力源とします。これにより長時間連続して定電圧、または定電流を取り出すことが可能です。

商用電源では、電圧変動が発生しているため、そのまま出力すると直流電流も変動してしまいます。出力した直流電流が不安定な状態だと、低電圧で駆動する機器に用いる場合、誤作動の原因になるので、安定化した直流が必要になります。この安定化した直流を得るために「直流安定化電源」が用いられます。

一口に直流安定化電源といっても、回路方式の違いにより、スイッチング式とトランス式(ドロッパー式、リニア式などとも呼ばれる)の2種類に分類されます。

■スイッチング式・トランス式の違いとは

ここでは、スイッチング式とトランス式にどのような違いがあるのかを見てみましょう。

スイッチング式は、トランジスタなどのスイッチング素子を用いて、商用電源の交流を直流電流に変換する装置で、トランス式に比べてコンパクトかつ軽量なほか、電力の変換効率も優れています。

しかし、出力を安定させるために、多くの制御を必要とするので、その分部品点数が多くなります。また、スイッチング素子のオンとオフの切り替えを高速で繰り返すため、大きなノイズが発生しやすい特徴もあります。

一方でトランス式は、スイッチング式に比べると電源のサイズが大きく、重量があります。

しかし、回路の構造がシンプルなため、一般的に価格が安価です。また、ほとんどノイズを発生しないことから、医療機器や音響機器のようなノイズを嫌う機器に対して採用されています。

トランス式の重量が重たく、形状が大きい理由は、鉄心にコイルを巻いた電源トランスを用いていることと、大きな発熱ロスを放熱するのに必要なヒートシンクを搭載しているためです。それに対してスイッチング式は、トランス式に比べて、電源トランスやヒートシンクがはるかに小さいことから、電源の小型化・軽量化を実現しています。

スイッチング式とトランス式の身近なものの例として、携帯電話のACアダプタが挙げられます。古い携帯電話の充電器は、サイズが大きくて重たいトランス式を採用していました。一方で昨今の携帯電話の充電器は、スイッチング式が主流になり、トランス式の充電器よりもコンパクトで軽量なものになっています。

■スイッチング式の原理・仕組みとは

それでは、なぜスイッチング式がトランス式に比べて小型化・軽量化・高効率化を実現しているのかについて解説します。

トランス式では、鉄心にコイルを巻いた電源トランスにより、商用電圧を、交流の低電圧に変換してから整流(交流を直流に変換)します。

一方でスイッチング式は、商用電源を直流に整流してから電圧に変換します。しかし、整流されるとトランスで変換できないため、スイッチング電源では、トランジスタやMOS-FETのスイッチング素子による高速スイッチングでパルス波の交流に変換してから、高周波トランスに送り込みます。

なぜスイッチング式がこのような複雑な仕組みをしているか理由に、スイッチング式の代表的な制御方法であるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)が関係しています。

PWMとは、パルス波の幅をスイッチングのオンとオフの時間比(デューティサイクル)により調整し、各パルス波の面積を同じにすることで電圧の安定化を図る方式です。

PWMにより、同じ面積に調整されたパルス波は、一定電圧の安定化した直流に出力されます。パルス波はスイッチング素子がオンのときだけ発生し、それぞれのパルス波は切り貼りして繋ぎ合わせたように出力されるため、変換効率にムダがなく、発熱も軽減できます。

トランス式では、安定化電流を得るために、電圧変動している部分を半導体素子の抵抗を使って熱として切り捨てる仕組みのため、スイッチング式に比べて変換効率が劣ります。

電源トランスの大きさについては、電源の周波数に反比例します。商用電源の周波数は、50Hz/60Hzと低いので、トランス式の電源トランスは、どうしても大きさが必要になります。

しかしスイッチング式では、商用電源の周波数50Hz/60Hzから高周波の10kHz~数100kHz程度に変換するため、電源トランスが小型かつ軽量なものでも対応できるようになります。

■スイッチング式の電源は小型化・軽量化・高効率化するのに便利

直流安定化電源は、スイッチング式とトランス式の2種類があります。

スイッチング式は、トランス式よりも回路が複雑になりますが、入力電圧の変動に対して高速スイッチングでパルス幅を制御することで、小型化・軽量化・高効率化を実現しています。これらのメリットから、現在のACアダプタは、主にスイッチング式が採用されています。しかしスイッチング式は、ノイズが大きくなる点には注意が必要です。

トランス式は、回路がシンプルな分、大きな電源トランスなどを必要とします。そのためサイズが大きくて重たいデメリットがあるものの、ノイズをほとんど発生しないメリットもあります。これらの特徴から、トランス式は医療機器や音響機器などのノイズを嫌う用途で活用されています。